DRAGON GIRL 1

・・・・・from「20XX12XX」

 やっと見つけた。
「それ」の放つ淡い光を見つけたその刹那、彼女は我知らず息を呑んでその脚を止めたが、しかし次の瞬間には、むしろそれまでよりも速度を上げ、せき立てられるようにその光の方へと再び歩き始めた。降ると言うよりはむしろ叩きつけるような雨の中、腰まで伸びる深い茂みにも関わらずほとんど走っているとさえ言える足取りで。そうして歩を進めながら時折、頬を濡らす水を手の甲で乱暴に拭う。それが昨夜から降り続くこの激しい雨の滴であるのか、休むことなく歩き続けたがゆえ流れる汗なのか、それとも別の何かなのか、知るのはただ彼女一人だ。
 やがて彼女は「それ」の傍らにたどり着いた。
 深く暗い森の奥、淀んだ沼の縁の泥の中に埋もれてなお、「それ」はその淡い橙の光を曇らせることもなく、自身を手にする者の訪れを待って……長い、長い時間待ち続けて、ただ、そこにあった。
 その時の長さが生み出した静けさや重みに思いを馳せることも、「それ」の淡くやわらかな光に見惚れることすらせず、彼女はなんのためらいもなく真っ直ぐにその手を伸ばして「それ」をしっかりと掴み取った。慌ただしく背中の荷物を下ろし、紐を解いて荷の中に腕を突っ込むと、底の方に厳重にしまいこんだ袋を引き上げる。袋の口を縛る紐を解くと中から淡い光が零れ出す。その色は、彼女が手にした「それ」 と同じ淡い橙だった。
 と、その光がまるで爆発したように強い光を放った。彼女は突然の閃光に思わず両腕で己の目を覆ったが、あまりの衝撃に手にしていた「それ」をぽろりと取り落としてしまった。しかし、「それ」が再び泥の上へ落ちることはなかった。なぜなら「それ」は、彼女が開けた袋の中から飛び出した「それら」とともに、まるで大地に弾かれでもしたように宙へ浮かび上がったからだ。
 彼女の頭上遥か高く浮かび上がった「それら」の放つ橙の強い光が、薄暗かった沼のほとりを南の国の太陽もいかばかりかという明るさで満たす。その光を、彼女は目を眇めて見上げた。
 その中心にあったのは──明るく輝く七つの光。
 それを確認すると、彼女はその両腕を真っ直ぐその光へ向けて伸ばし、そして、呼ばわった。
「出でよ神龍! そして願いを叶えたまえ!」
 そう高らかに声をあげてから、彼女にとっては永遠にさえ思える長い静寂の後、光の中に小さな黒い点が現れ──そして、見る間に空を覆い尽くすほどに巨大な、異形の者がその姿を現した。
 その圧倒的な存在感に、彼女は完全に硬直した。巨大さという物理的な存在感以上に、その存在そのものが放つ異様な威圧感に息さえできなくなる。
 そんな彼女の様子など全く意に介さず、悠然と大空に君臨する異形の者──神龍が、言葉を放った。それは音として耳に届いているようでもあり、空気の振動など介さず彼女の頭の中へ直接送り込んできているようでもあった。
「宝珠を七個揃えし者よ、さあ、願いを言うがいい。どんな願いも一つだけ叶えてやろう」
 その言葉に、彼女はようやく深く、大きく息をついた。
 そうだ。あたしはこのためにここまで来たんだ。
 新鮮な空気を体内に取り込み、そして、今度は、全力で送り出す。彼女は腹に力を籠め、先ほど彼を呼ばわったとき以上に大きく、強い声を張り上げた。
「あたしの願いは────!」


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