Gift 1-2

・・・・・from「Gift」

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 冬至を過ぎたばかりで早々に日が傾き始める午後、テレビからはやたらに賑やかなクリスマスソングをBGMに、お笑い系のタレントのギャハハと豪快で、しかしどこか空虚な笑い声が響いている。
「……………ヒマ」
 こたつにぺたりと頬をつけ、郁は今日何度目かわからないその単語を呟いた。
 今日の郁のシフトは公休。柴崎は通常通り出勤しているから、一人きりの部屋はなんだかがらんとして物寂しい。
 そう、今日は公休日──そして、クリスマスイブ。
 しかし、せっかくイブに休みだからと言っても、友達とクリスマスパーティをするわけでもなく、当然デートなんて予定があるはずもなく。郁は一人で寮の部屋でぼんやりしていた。
 ……デート、なんて。
 郁はこれも今日何度目かわからないため息をついた。こたつのテーブルが吐息で少しだけ湿る。
 図書基地の勤務はみんなシフト制だから、土日も祝日も当然イベント日もまったく関係ない。だから自分で希望を出した訳でもないのにクリスマスイブなんて大イベントの日に公休が当たるなんてのはこれ以上ないほどのラッキー、のはず、なのだが。

 仕事があれば、教官に会えたのになあ。

 クリスマスイブだからといって、自分が堂上とデートをする、なんて、そんなことは何がどうひっくり返ってもありえないことくらいわかっている。だって別につきあってるわけでもなんでもないし!
 ていうかそもそも好きとか全然言ってないし! いや言えないし! だいたい堂上教官だってそんなの迷惑だし絶対!
 だけど……それでもやっぱり、仕事でいいから、クリスマスイブは近くにいられたらいいな。
 ……なんて、「このまま近くにいられたらそれでいい」って思ってるくせに、ちょっと色気を出したことを考えたバチなんだろうか。郁は本気でそんなことを考えてしまった。
 クリスマスイブの今日、時間だけはたっぷりあるのに肝心の好きな人には会えないなんて。うう、なんの罰ゲームよ。
「……図書館いこ」
 郁はのっそりとこたつを出て立ち上がった。一人で部屋でぼんやりしていても気が滅入るばかりでいけない。ちょうど返却しなくてはいけない本もあるし、新しい本を借りて来て、読みこんで意識を別の方に飛ばすでもしないと、このまま夜までずっとうだうだしてしまいそうだし。
 ……それに外に出れば、もしかして、もしかしたら、教官とばったり会っちゃったりするかもしれない、し?
 どうせもう罰ゲームに当たってしまったのなら、夢くらいは遠慮なく見させてもらおう。それくらい許してくれたっていいじゃない?
 郁は誰だかわからない誰かに言い訳を主張して、そしてなんとなく、──何の意図もない、ないんだからね? とやっぱり誰でもない誰かに言い訳しつつ──普段よりほんの少しだけ女の子っぽいトップスを選んで着替えると、コートをひっかけて部屋を出た。

    *

 で、何がどうしてこうなっているのか。
 郁は歩きながら、「神様ってやっぱり本当にいるのか?」と思わず天を見上げてしまった。
 そうだよクリスマスイブだもん、キリストさんのお誕生日の前日なんだから、神様が空の上からこっちをのぞいているのかもしれないし。いや、郁は別にキリスト教徒ではないし、そもそも真冬らしいグレーの雲が一面に広がる空を見上げたところで神様が見える訳は当然ないのだが。
「何してんだ?」
「いえっ別に! あ、そう、冷えるから雪でも降るのかなあって!」
「ああ、夜半には降るかもって言ってたな、天気予報で」
「そ、そうですか、あはは」
 いかにも挙動不審な笑いの郁に、堂上が呆れたような視線を投げる。
「年頃の女が口をぱっくり開けて空を見上げてるのもどうかと思うがな」
「わわわっ!」
 言われて郁はあわてて俯いて口を押さえた。あわわ、あたし何やってんだ! その横で堂上がくくっと笑うのが聞こえて、郁は自分の顔がかーっと熱くなるのがわかった。
 寮から図書館までの道のりを、郁は熱くなった頬を手のひらで押さえつつ、堂上と並んで訓練速度よりはやや遅目のペースで歩いているのだった。


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