続・フクさんの素朴な疑問。・・・・・from「燃えて青春駆け抜けろ!」 |
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フクさんの素朴な疑問。 <<
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稲嶺邸の家事一切を取り仕切る家政婦、その名はフクさん。 稲嶺が現役の司令であった頃からずっとこの家の家政婦を務めてきた彼女だから、余計なことはしない、言わない。 が。 そんなフクさんだって、やっぱり普通のおばちゃんだった。テレビをつければ主婦向けワイドショーだし、ご近所で顔見知りに会えば最近の噂話に花を咲かせる、といった類の。 だから、小牧・手塚組が警護担当の日、いつものように小牧たちに邸内の掃除を指示した後で、自分の観察に基づく突拍子もない問いを投げてくることがあったとしても、それは仕方のないことかもしれなかった。 「ねえ小牧くん。あの二人って、」 「はい?」 フクさんが「あの二人」と言えば、今日はここにいない堂上・郁組のことである。今回は一体何を見つけてしまったんだろう。フクさんの声を背後に聞きながら、手塚は心にガードを張った。どんな問いが放たれても動揺しないように。聞き流せるように。 しかし、おばちゃんの本気は甘くなかった。 「お笑いコンビでも目指してるの?」 「はぁ!?」 せっかく張ったはずのガードも一瞬で吹っ飛び、手塚は素っ頓狂な声をあげて振り返ってしまった。その勢いにフクさんも目を丸くするが、しかし自分の観察結果の報告の方が大事、とばかりにあらためて小牧に向き直った。その小牧の方も必死に上戸を抑えているのが手塚にはよくわかる。というか、あの小牧が、この状況で、よくも上戸を抑えられているものだといっそ感嘆する。ここまで我慢してさえフクさんの報告を拝聴したいということなのだろうが、 ──なんか、頑張るところ間違ってませんか小牧二正。 そんな手塚の思いを知ってか知らずか、小牧は一度大きく息を吸って、吐いて、なんとか態勢を立て直したところで「どうしてそう思うんですか?」とにこやかに尋ねた。するとフクさんは「聞いてよ!」とばかりに前のめりになった。 「だって、あの二人の会話っていったら、ボケとツッコミが絶妙過ぎて! 普通にお仕事の話かしらねーなんて思って聞いてたら、いつの間にかボケとツッコミの応酬になってるんだもの。ああ、郁ちゃんがボケで堂上くんがツッコミね。でもたまに郁ちゃんがツッコミ返すことがあるのよ。それがまたアクセントになって、つい笑っちゃうのよ。それにしたって、何を話しても全部その調子なんだもの、これはきっとプロを目指してるのに違いない! と思って!」 そんなバカなことあるかい! と手塚の方こそ全力で裏拳でツッコミたくて仕方ない。思わず左手を上げそうになったところでさらなる爆弾が落とされた。 「実はそうなんです。うーん、やっぱりフクさんにはバレちゃいましたか」 「こまきにせいぃ!?」 上げかけた左手があまりの衝撃に宙に浮く。完全に呆気にとられて硬直した手塚を無視して、小牧のにこやかな声が続いた。 「日常会話からでもどれだけネタを拾って広げられるか、欠かさずトレーニングしてるんですよ。堂上はあれで関西の血が流れていますからね、ツッコミはお手の物ですし、笠原さんは見ての通りの天然ですから」 「あらまあ、そうなの、堂上くんは関西の方なのね。どおりでいいツッコミだったわ」 「でしょう。ただ、今はこんな状況でもありますし、その野望はひとまず伏せているんです。その分、できるところでは自主トレを欠かさないようにしよう、ということだそうですよ」 「地道な努力って大事ですものね。えらいわあ。じゃあ、いつか落ち着いたらデビューするのかしら」 「そうですね、事態が落ち着けばいずれ。そのときを楽しみにしていてください」 「じゃあ、それまではわたしも何も言わずにいた方がいいわね」 「ええ。是非そのように。いろいろお気遣いいただいてありがとうございます」 まかせてちょうだい。そう言いつつも満面にくすくす笑いを浮かべたフクさんは、ちょうど鳴った洗濯機のブザーに「はいはい」と返事をしてぱたぱたと歩いていってしまった。その後ろ姿を見送りながら、手塚はようやく「小牧二正……」と自分の存在を主張するタイミングを得た。その声に小牧もやっと手塚に向き直ると軽く苦笑を浮かべ小声で言った。 「ああいうタイプは下手に否定するとかえって探ろうとして引っかき回すからね」 「そういう問題じゃねえだろ!!」 * 当麻の亡命事件が無事終息し、稲嶺邸も元通りの静けさを取り戻してしばらくたった頃。 「ねえ和市さん、堂上くんと笠原さんはいつテレビに出るのかしら?」 「えっ」 あの日の夕方、基地への帰り際に小牧はきちんとフクさんに冗談の訂正をしていったのだが、残念ながらフクさんの頭には残らなかったようである。 |
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fin. |