rewards 1・・・・・from「MRI」 |
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恥ずかしながら、生まれてこのかた、失神したことは一度や二度ではない。 しかしそれは、おそらく自分に限ったことではない。少年時代、年相応のアホウさでそれなりにやんちゃをしでかしていた口ならば、いわゆる「落ちた」経験のある者は意外と少なくないはずだ。それは体育の授業の柔道の絞め技であったり、少しばかり度を越したプロレスごっこであったり、あるいは加減を忘れた本気のケンカであったり。失神する機会……もとい、危険は、思いのほか身近にあった。 そして自分に限って言えば、この仕事に就いてから(正しくは図書大に入ってから)というもの、かれこれ何度落ちたか……三回目まで数えてあとはやめた。数えても意味がない上に、自分が数えなくとも傷痕と反省材料の数が一緒に積み上がるばかりだからだ。 しかし他人が呆れる程に何度も落ちたとしても、「これは失神しそうだな」と思うことはあれど「失神した」と自覚したことは一度もない。 当たり前だ、普通に夜眠るときだって「あ、今寝たな」と思う人などいない。もしそう言うやつがいたら、誰もが「それはまだ起きている」と言い返すだろう。それと同じだ。 意図せぬままに意識を失って、そこから目覚めたときに初めて、自分が失神していたことを知るのだ。 そう――今も。 * 目を開けたはずなのに視界が暗い。 なんだか周りが妙に騒がしい。 そして、過去に何度も覚えのある、全身の不自然な重さ。 通常の睡眠からの覚醒とは明らかに異なる、しかし確かに覚えのある不快感に、俺は己の現状を理解する。 ……ああ、落ちたのか。 気付かぬ間に意識が途切れる、という意味では睡眠も失神も確かに同じだが、当然のことながら身体の中で起きていることは全く違う。睡眠は心身をリフレッシュさせるための生体の正常な働きだが、失神はいわば強制シャットダウンだ。 そういえば、パソコンの省電力モードを指してスリープモードとはよく言ったもので、睡眠状態にあれば刺激を与えることで意識は戻って来る……ありていに言えば叩き起こすことが可能だが、シャットダウンした失神状態でそれは不可能だ。どんなに呼びかけられてもそれを受け取る術がないのだから。 そんな異常終了からの復帰なのだから、失神からの覚醒時、さわやかな目覚めなどは決して有り得ない。 全身を襲う不快感に一つ息をつくと、俺はここに至るまでの記憶を掘り起こすべく再び目を閉じた。 どうせ、こうして意識を取り戻したからと言ってすぐさま普通に動き回れる訳ではない。かつては無理をしてでも即座に起き上がろうとしたが、全身を搦め捕るような不快な怠さと、それがために思うように動かせない身体とのコンボで使い物にならず、却って足手まといになることを学んだのはまさしく怪我の巧妙か。 今までの経験だと十五分も休めば、不快感を完全に拭い去ることはできなくとも身体はほぼ問題なく動かせるようになるはずだった。 |
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